RW草津温泉旅行二日目
二日目の朝である。
清涼感あふれる高地の空気を胸いっぱいに……などということをやっている暇はない。
朝食に行かねばならぬ。
女性陣は朝風呂に行ったりして余裕をもって行動していたのかもしれないが、男性陣は当然のようにギリギリまで睡眠。
これが暗黙の了解である。
睡眠は何物にも代えがたい。
滞在しているホテル(超良心的宿泊費)は、朝食も夕食もバイキング形式。
肉、野菜、魚、玉子焼きなど、皿に乗るだけ乗せて、納豆、米、味噌汁を確保してスタンバイ。
朝食はモリモリ食いましょう。
どうでも良いが、自動でお絞りっぽいブツを放出するメカが備え付けられていたが、出てくるお絞りが滴るほどにジューシーなのはいただけない。むしろこれはお前が絞れという意味か。
各自目の前に並べている内容に個性が表れるなあと思いつつ、さっさと食っていく。
談笑しながらゆったり食うような暇はない。
なぜなら、食事の時間が相当短く設定されているためである。
まだ食べているのに次の集団が現れて……プ、プレッシャーが。
とは言うものの、美味しく完食させてもらいました。
ご馳走様でした。
さて、あまり中身のない朝の情景から始まりましたRW草津旅行の二日目ですが、ここで登場人物を整理しておきましょう。
遊木秋勇。RW代表。今回の旅行の取りまとめ役(しおりもつくったよ)。草津は結構よく来ている。今回の旅で草津の四季を制覇したとか。草津に来ると帰ってきた気がしちゃうタイプ。
須々木正。この文章の執筆者。草津はそこそこ来たことあるが、今回は10年ぶりくらい。わー、懐かしー。
米原のぞみ。通称のぞみん。草津は一回来たことがあるけれど、そんなに分からない。普段は安定のネタ投下要員(品質保証)。
北村遼希。初☆草津。だいたいどうにかしてくれる(あばうとな説明)。カメラを構えると視界に飛び込んでくる。
堤慎爾。初☆草津。基本そんなにテンションが高いキャラではないが、唐突にスイッチが入ったりする(もう一人のつつみん)。カレーは飲み物。
荻野薙。またの名を夜月水華。今回のメンツで唯一、RWの旧メンバー。そのため、RW関係者は薙ちゃんと呼ぶ。自然と戯れのびのびと生きていそうなイメージ。いつも楽しそうだねー。
時刻は午前9時。
週間天気が予言した運命に打ち勝ち、雨のあがった草津。昨日のザンザン降りが嘘のよう!
女性陣が朝風呂にいった時点では降っていたらしく、確かに地面は濡れているが、朝露のような清々しさでこれもまたよし。
というわけで、街に繰り出しましょう。
レッツ・ゴ~。
なお、ネタはきっと遊木が漫画でいろいろ消化してくれていると思うので、こちらはユルユル描写でお送りしようと思います。
情報はできるだけ正しいものをお届けするべく努力しますが、記憶が曖昧なところも多いので悪しからず。こんな雰囲気だったんだよと伝わればそれで良しです。
群馬県
標高1130メートルから1260メートルの高原性盆地に位置し、改めて言うまでもなく温泉地として知られています。日本を代表する名湯として知られているわけですが、古くから湯治場として多くの人々を受け入れてきました。
そんな草津温泉の象徴とも言えるのが、温泉街の中心部に湧く源泉、
草津の温泉街の地図は、大抵この湯畑を中心に描かれています。東京都心の地図が皇居を中心に描かれるのとだいたい同じ感じです。
天気も良さそうなので、今日一日存分に楽しみたいところですが、最初は〈草津熱帯圏〉なるスポットに行くことになりました。
草津の温泉街から徒歩で行けて見るところがある範囲が、湯畑中心にだいたい東西2キロメートル。草津熱帯圏は、その範囲の一番東に位置します。
そんなわけで、ホテルを出たらとりあえず東へゴー!
ホテルの立地がなかなか良いので、3分くらいですぐ湯畑に到着します。
湯畑でも特に有名な写真撮影スポット、湯滝。その名の通り、湧き出たお湯が最後に滝のごとく流れ下ります。
が、湯畑はあとでまた来ることになるので、とりあえず軽く眺めたら先へ。
ちょうど紅葉が進んで葉っぱが色づき始めている時期だったので、赤や黄色の色彩があちこちに見られました。早朝まで降っていた雨に濡れ、朝の陽射しを反射してキラキラと。いとおかし。
10分もたたずに草津熱帯圏到着。
行ったことのない人が名前だけ見ると、いったい何なのかと思うかもしれませんが、一応動物園です。よく草津熱帯園と間違えられますが、「園」ではなく「圏」です。
1970年開業。昆虫館、熱帯大ドーム、屋外展示の三つのゾーンで構成。日本で最も高いところにある動物園。日本一の爬虫類の飼育種数。エリマキトカゲ、ヘラクレスオオカブトを日本で最初に公開。
こんな感じですね。あまり規模は大きくないので、客が多いイメージはありません。
そして、1970年開業とのことですが、おそらく大部分はそのときのまま。故に、昭和の風合いを今に保っています。たぶん保ちたいわけではないと思われるが……。
建物に入り、ホテルでもらった割引券で少しだけお得に入園すると、ワニの剥製や昆虫標本等の展示。
そこを抜けると、いったん建物の外に出ます。いわゆる屋外展示ゾーン。
そのメインの見所は、モンキーパラダイス。平たく言えばサル山です。
RW一行、平日午前の閑散とした園内をゆったりテクテクとサル山へ。
囲いのところから可愛らしいモンキーズを眺め始めます。
全体的に毛並みも良く、活動的。遊び盛りの子ザル、面倒を見る親ザル。
そんな光景を見始めたその瞬間、何かがモンキーズに投げ入れられた。
視界の外から、ひょ~いという感じに。
見ると、満面の笑顔で薙ちゃんが餌を投げ入れていた。野菜など角切りにしたやつがのっているお椀がその手に。
「それどうしたの?」
「あっちで売ってたよ~」(と言いつつ、ひょ~い)
確かにあっちにお椀が並んでいる。野菜の無人販売所みたいに、お金を入れて勝手に持っていくようなシステム。
……ていうか早いなオイ。一緒に行動していた気がするのに、いつの間に買ったんだよ!
なんて一応ツッコミはするものの、我々は知っている。薙ちゃんとはこういうものなのだと。
海水浴場に到着し、みんなが「海だねー」と言ってるときに、すでに浮輪を借りてきているタイプなのである。
ひょ~い。
屋外展示は他にもラマやヤギやヒツジなど。適当に愛でたら、いよいよ熱帯ドームへ。
温泉熱を利用した亜熱帯気候のドーム内に足を踏み入れると、メガネが曇るのはメガネ民の宿命。
高さ15メートル。営業中なのに廃墟感のあるドームの構造物は、単純にビジュアルとして好み。どことなくスチームパンクの風味が漂っています。そして、ポタッと時々滴る雫は、ドーム内の湿気によるものか、単なる雨漏りか。
内部は階層構造(公式によると3階層の扱い)になっていて、魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類、いろいろいます。全体的に手作り感満載ですが、種類はかなり豊富です。
充実の各種爬虫類、平和そうなカピバラさんたち、ミニには見えないミニブタ、元気に跳ね回る小型霊長類等々。
哺乳類など、結構お触りOKなのも特徴で、この距離感がなかなか良いです。
そう言えば、RWはなぜか動物園とか水族館とか一緒に行く機会が多いですね。ここもその一つとして記憶されることでしょう。
ドームをあとにして、最初の建物に戻り、ラストはドクt……ビューティーフィッシュ。
美形の魚ではありません。手や足を水槽に突っ込むと、小魚が集まって啄むあれです。
え、なになに、それはドクt……げふんげふんっ! その名は、商標登録されているということで、草津熱帯圏では、ビューティーフィッシュらしいですよ。ちなみに、正式には、ガラ・ルファという名前の魚ですね。ほぼ知られていませんが。
僕はこの手のやつは初めてだったので、なかなか面白かったです。ホントに食っとるよ!
なかなか癖になる感触ですね。癖になる感触ですが、二名ほど、くすぐったくて耐え切れずリタイアがいたような。
正午前には熱帯圏を出て、来た道を戻って湯畑へ。
昼食どうしようかなという時間帯ですが、湯畑横のコンビニで買って適当に食えばよいだろうという方向で。そして、その前に湯畑周辺を散策しました。
僕は草津に来たのが久しぶりなので、いろいろ新しい建物ができているのを見ながら、ぶらぶらと。湯畑はメインの観光スポットなので、その周囲は特に整備が進んでいました。しっかり雰囲気を壊さないよう配慮されているので、それだけでも見ていて楽しいです。
湯畑の湯滝とは反対方向、つまり標高が高くなっている側の高台にある光泉寺にも立ち寄りました。721年、薬師堂を行基が創建したと伝えられているそうです。日本温泉三大薬師。おみくじ引いたりしました。
その後、コンビニで普通におにぎりやサンドウィッチなど買って、湯畑周囲にたくさんあるベンチの一つに腰かけ、昼食を……と思ったら、ハチ現る! そう言えば、草津に着いてから何度か見かけたような。あれは伏線だったのか。
より湯畑に近いベンチに移動したら大丈夫そうだったので、ほどほどの混み具合の湯畑を眺めつつ、改めて昼食いただきました。
は~い、ここから午後の部です!
午前中は湯畑より東側に行っていましたが、午後は西へ。目指すは〈
「さいのかわら」と言うと、「賽の河原」という表記の方が一般的であるように思いますが、草津では「西」です。
温泉街の中心である湯畑より西へ徒歩五、六分ほどで、西の河原公園の入り口につきます。ちなみに、公園の入り口付近に、片岡鶴太郎美術館があります。
「草津は俺の庭」が座右の銘である遊木によると、その付近にある土産物屋に看板猫が二匹いるとのこと。ただ、だいぶ前からいたので、年齢的にももしかしてそろそろ……と心配していました。
「ちゃんと二匹いるかな……」
視界に店が入る。
でっかいスティッチのぬいぐるみが店先に鎮座。
大きなプラスチックのたらいにはまっています。
五右衛門風呂に入るお父さんの如く風格があります。
そして、その懐には―――(ここで感動的なBGM)
なんということでしょう。
看板猫が………三匹います。
すごく気持ち良さそうに眠っています。爆睡です。
スティッチに抱かれて、すやすやと――。
「え……増えとる……!!」
予想外デース!
なんでも、一匹失踪して、代わりに一匹追加したら、失踪してたのが見つかった、という流れのようです。
しかし、揃って毛並みもつやつや。温泉の効能か、はたまた、みんなの愛の賜物か。
そんなわけで、この子たちのことは任せたぞ、スティッチ。
ちなみに、遊木の座右の銘というくだりは創作です。猫三匹は事実です。読者の予想を裏切る展開、痺れる~!
入り口でネタ一つ転がっていましたが、ようやく西の河原です。
公園内では、河原のあちこちから温泉が湧きだし、湯の川となって流れています。
周囲を森に囲まれながら、温泉の独特の色味、立ち上る湯煙、ゴツゴツした火山性の岩石が風光明媚な景観を生んでいます。
湯畑に並ぶ草津の人気スポットです。しかも、紅葉シーズンでなお良し。
ここも僕は久しぶりでしたが、もともとは石の遊歩道があるだけだったのが、何やらあちこち整備されているようです。ただの温泉の池が足湯になっていたり。
足湯は手前と奥にありましたが、奥の方がより開けていて眺めも良いです。
というわけで、せっかくなので足湯しました。気候もちょうど良いし、ここでずっと読書でもしてたら最高だなあ。実際、読書している人もいましたが。
足湯の後は、草津ビジターセンターに立ち寄り、草津の自然や歴史を軽く学びました。草津の強い酸性の水が、環境に悪影響を及ぼさないように云々とか。
ビジターセンターを出ると、目の前に〈西の河原露天風呂〉があります。とりあえず超デカいので、せっかくだし入りたいところですが、もう少し散策してからにしようということに。
露天風呂横の散策路を進み、ハイキングコースのようなルートを抜けると、天狗山ゲレンデがあります。温泉街から徒歩でいくならこのあたりが一番西です。
さて、もちろんまだスキーシーズンじゃないので雪はありませんが、グラススキーやパターゴルフなどを楽しめるようになっています。我々はやりませんでしたが。特に何をするわけでもなく、写真だけ撮ってちょっとまったりと。
西の河原露天風呂に戻り、そして、いざ入浴!
草津は無料の外湯がいくつもありますが、こちらは有料です。ただ、草津に来たら一度は入っておきたい。
何と言ってもその特徴は、広さと開放感。男女あわせて500平方メートルは、日本有数の広さとのこと。
なお、男湯は、先程通った散策路からよく見えます(周囲に囲いはありますが、露天風呂が谷底にあり、散策路は少し高いところを通っているため)。そんな近い距離ではありませんが、中の様子がガッツリと分かります。だからどうというわけでもありませんが。
脱衣所を出るとただ風呂があるのみ。湯気が立ち上って、奥の方はよく見えないくらい。そして、屋根もないので、とにかく空が広い。周囲は自然が豊かで、建物も見えません。近くには車道もないので、自動車の音もしません。温泉がばしゃばしゃ注がれる音の他は、木々の間を風が抜ける音がするくらい。
良い。これぞ露天風呂!
風呂の奥の方には、木でできた卓状の構造物があって、乗れるようになっています。あわせて四畳半くらいの広さがあって、その上は水深が数センチくらい。
胡坐をかいて瞑想するも良し、寝転がって空を眺めても良しという感じですが、綺麗な青空だったので、僕は寝転がってまったり空を眺めてました。まさにプライスレスなひと時。良い。
ホテルに戻る前に、さらに寄り道。
なんでも、薙ちゃんが熊笹アイスなるものを食べたいと。
笹は食材なのか?と少し思いましたが、どうやら
しかし、目的のアイスを売っているお店はまだ開いていなかったので、別の店に。
僕と堤君は豆腐アイス。後味に豆腐を感じる爽やかな甘み。
遊木に焚き付けられた北村君は、しょう油アイス。しょう油アイス? どんな味なのか想像つかんという感じですが、こういうときの北村君。
店先のベンチのあたりにいた僕と堤君は、アイス用の小さなスプーンも使いながら豆腐アイスを食し、チャレンジャーの動向を視線で追跡。
しょう油アイスをゲットして戻って来る北村君。豆腐アイスとは違い、カップに入っている。見ると、アイス的なものの上に、しょう油的ではないなにかがかかっている。しょう油のようにさらっとした感じではない。興味深い。
店先にたむろしているところに戻ってきた北村君。そのときだった。
持っているカップに左右から同時に襲いかかるスプーン。
なにやつ!?
それは、須々木&堤君の手が握るスプーンだった。
まさに完璧なシンクロ。
揃って何の許可も取らず、手が勝手に動いていた。
なんだこの引力は! しょう油アイス、恐ろしい子っ!
そして、冷静に制止する北村君。
「混ぜてないですから!」
どうやら、しょう油アイスは混ぜてから食う必要があるらしい。
混ぜてくれる北村君。それを待つ二人。混ぜたら結局もらう二人。
北村君……優しい子っ!(涙)
なお、しょう油アイスに関しては、全会一致で意見がまとまったので、ここにそれを記しておきます。
「しょう油アイスは、しょう油の味ではない。これは、みたらし団子味である!」
みたらしだけでなく、みたらし団子と言いたくなるのがポイント。
普通に美味しかったです。みたらし団子味だけど。
なお、草津味アイスを求めていた薙ちゃんは、一人おかきを食っていた。
夕食。
直前にいろいろ食っていたが、夕食の時間は訪れる。
相変わらずのバイキングですが、堤君はカレーを食わず(朝は食っていた)。
そんな我らのテーブルでの話。
遊木「カレーが飲み物ということは、ハヤシライスも飲み物なのか?」
堤 「いやあ、ハヤシライスも飲み物ですね」
北村「じゃあ、カツカレーは?」
堤 「カツカレーは代表的な飲み物ですね。スポーツドリンクみたいなものですよ」
珠玉の名言、爆誕である。
食後、少し休憩をしてから再び外へ。
二泊三日の中日。しかも、天候にも恵まれている。活動的にならざるを得ない。
フロントでゲットしたチラシによると、湯畑と西の河原では最近通年でライティングをはじめたとのこと(湯畑は2016年12月、西の河原は2017年3月より)。写真を見る限り、なかなかのクオリティー。建築照明デザイナー監修の本格的なもの。
これは普通に見ておきたい。
まずは西の河原へ。
紫をベースに、赤系から青系まで緩やかに変化していく照明。
明るさは抑え気味。けれど、しっかりとした存在感。
そこかしこから立ち上る湯煙を照らし出し、光は静かに質量を持つ。
もとから独特の景観を誇る西の河原が、さらに幻想的に彩られていました。
この空間とよくマッチしていて、これだけでも一見の価値ありです。
続いて湯畑へ。
そして、その道中、ついに薙ちゃんは草津味アイスをゲットするのだった。結構寒いんだけど、嬉しそう。良かった良かった。
湯畑は、高温の湯が大量に湧き出す巨大な源泉です。
草津温泉の源泉は数あれど、知名度で言ったらナンバーワンでしょう。
湧き出したお湯を各旅館に分けつつ、温度を下げるため、木製の樋がたくさん並んでいます。この樋には硫黄が沈殿していきますが、それらは採取され湯の花としてお土産などになっています。
草津に所縁のある人の名が刻まれた石柱の囲いの内側、並ぶ木製の樋からもうもうと湯気を立ち上らせる光景は、これぞ草津というべきものです。
そして、その湯気に西の河原同様のライティング。湯畑は周囲に建物が並ぶので、趣はかなり異なりますが、これもまた良し。
湯量や温度の関係で、湯煙の勢いは湯畑の方が上。たえず姿を変える湯煙と光の共演は、ずっと見ていても飽きません。
そんなわけで、湯畑周辺を適当にぶらぶら。
ぐるりと回って、〈
自噴の湯量が日本一の草津温泉ですが、強い酸性の泉質により配水管が腐食してしまうので、各地区の人が入るための外湯が多くつくられたようです。
そのうちいくつかは、観光客向けにも案内されていて、白旗の湯はその中でも一番有名なものでしょう。ただし、普通に町民も利用するので、あくまで「もらい湯」の精神を忘れずに。
源頼朝が浅間山麓で巻狩をしたときに発見したとの伝承が残り、もともとは「
その特徴は……熱い!
草津温泉は全体的に熱いのですが、源泉そのまんまの白旗の湯はその筆頭。日によって結構違いますが。なお、水道の蛇口などないので、水で薄めるという選択肢はありません。金属は溶けるので、基本すべて木造です。
あまり広くありませんし、人の多い湯畑に面しているので、シーズンや時間帯によってはかなりの混雑となりますが、このときはオフシーズンかつ平日かつ夜ということで、無難な入り。
いざ突撃。
浴槽は二つ。過去に何度も来たことがありますが、通常、向かって左は入浴可能な温度、右は戦慄の温度。
迷うことなく左へゴー。
かけ湯。うん、熱い。左でこれはなかなか。
他二人も、どうしたものかという感じ。
しかし、せっかくなので入らないわけにもいかない。
少しばかり気合をいれて肩までつかる。
久々の草津はあちこち変わっていたけれど、この場所から見える光景は何も変わっていない。
レトロな木の浴場。桶をおく音が響く。立ち込める湯煙。強い酸味と硫黄のにおい。熱くて入れず浴槽の縁でおろおろする人。
そのときだった。
―――なんだ、この違和感………。
反対側の浴槽の様子が見える。
明らかに地元民とみられる年配の入浴客が一人、眉間に力を込めて入っている。それが、僕の記憶の中にある確かなイメージ。この場所から見ていた光景のはずだった。
しかし―――いま、向こうの浴槽も普通に人が入っている。しかも、結構普通に入っている。
ま、まさか!?
記憶との齟齬による動揺を押し隠しながら、反対側の浴槽に向かう。手を突っ込む。
普通に無難な温度、だった。
なんということでしょう!
女湯は、すってんころりんドッタンバッタン大騒ぎ(?)な展開があったそうですが、まあ、その話はおいておきましょう。
白旗の湯を出た我々は、本来参加予定だったのに如何ともしがたい理由により直前で不参加となってしまった凜ちゃんのためにお土産を購入。
さらに、コンビニで酒とつまみを調達し、ホテルへと帰っていくのであった。
その後、大富豪が大貧民から財産を巻き上げ叩きのめしたり、人狼が市民を食らう恐ろしい夜が訪れたりするのであった。