RWのミーティングのために須々木が書いたプロット(3人分)です。
詳細はブログを参照してください。

■遊木――ジレンマ喰いの笑い猫「猫と旅する話」

猫の行動半径はせいぜい500メートル以内と言われている。つまり、人間の足で数分程度の範囲。それで世界は完結しているのだ。

周りの敷地より幾分高くなった場所にある公園のへり、フェンスの向こうの目立たない空間。そこでうたた寝するシェリ(寝返りを打ったら転落するだろう)。幼女(5~8歳くらい)が自分に向けて「猫!」と言う声を聞き、ハッとして目を覚ます。

顔の上に猫の腹があった。どうやら猫が自分の顔の上を通過中だったようだ(猫の通り道で寝ていたのかもしれない)。幼女の友達もわらわら寄ってくる。

猫を頭に乗せたまま上半身を起こすシェリ。幼女たちの視線を受け居心地が悪そうだ。

猫をその場に置き、シェリは公園裏道路脇に停車中の4トントラックの荷台(荷台にコンテナや幌のないオープンタイプ)に静かに飛び降りる。すると、先程の猫も飛び降りてくる。シェリの服(または手荷物)に興味を示しているのか。トラックはシェリと猫を載せたまま発進する。

猫の行動半径はせいぜい500メートル以内。なかなか信号に引っかからず、トラックは5分くらい走った。ざっと2kmくらい。この猫にとっては人生最大の冒険のはずだ。「猫が好奇心で動くと碌なことにならない」。シェリは本物の猫を前に自嘲するように語る。

赤信号。シェリは猫を抱えてトラックの荷台から降りた。トラックは青信号で去っていく。

地面に下ろされた猫はシェリを見上げ立ち去らない。車道の信号はまた赤になる。目の前に軽トラックが停車する。猫は軽やかにその荷台にあがり、振り返り「ニャア」と鳴く。シェリが手を伸ばそうとするが、青信号とともに去っていった。「他者(ヒト)の意を汲まないのもまた猫たる所以か」。

■霧島――弓形のプリュイ「猫を探す話」

リサイクルショップ〈イリス〉のカウンターに、猫の貯金箱と子供らしいクレヨン画が置かれる。クレヨン画はトラムに乗る猫を表現しているようだ。「この猫(こ)を見つけて」。幼い女の子とその兄。依頼者は女の子の方。兄が見つけると言ったけれど、見つけられなかったので依頼に来たらしい。しかし、その兄は納得していない様子(でも付き添いはしている)。

「あのー、ここリサイクルショップなんだけど……」。女の子は何かを取り出す。木洩日はるかの店のチラシとその裏に走り書き。「店に聞き込みに来たけど忙しくて対応できないから宜しく!」という感じのメッセージ。というわけで、リサイクルショップがなぜか猫探しの依頼を受けてしまう。

イリス最寄りの〈グランツコリーネ停留場〉へ。トラムの方向転換をしている鉄道員に話を聞くと、今まさに乗っていると言う。あっさり依頼を達成しそうだ。

折り返しなので車内に客はいない。ダイヤに余裕のある昼下がり。車内にあがると、対角線方向の座席に猫が座っていた。

アイリーンとラスクが挟み込むように接近する。しかし、猫はその間をするりと駆け抜けて逃げてしまう。依頼主の女の子はしょぼんとしてしまう。

「ほら見ろ。やっぱ当てになんねーよ。けど次は俺が捕まえてやる。こう見えて猫を捕まえるのは超得意だからな」と兄が言う。「本当?」「まかせとけ」「わかった」。

貯金箱は返す(なお、もともと受け取る気はなかった)。兄妹は仲良く帰っていった。「客の要望に応えられない方が良いこともあるのね」。

■米原――夢見るバクと悪夢のディナーを「猫を見習う話」

稀子は学校行事で猫を演じなくてはいけない。カブラは「ふーん、猫か。ま、ちょうど良い機会じゃないか」と言う。稀子はその意図を図りかねる。

稀子は「カブラが猫好き」なのかと推測しつつ、図書館で猫について調べる。しかし、しっくりこない。

図書館に居つく人慣れした猫と出会う。いわゆる「図書館猫」のようだが、最近どこかからやってきたらしい。触れ合いつつ生真面目に猫を学ぼうとする稀子。

家で学びの成果を披露する。行事でみんなつける猫耳を装着し、猫っぽく「ニャア」とポーズを決める。カブラは面白いものを見てしまったという様子。さすがに少しばかり照れる稀子。

「カブさん、猫好きなんですか?」「え?」「ちょうど良い機会だって」「ああ……そういう意味じゃなくて。猫みたいにもっと気ままに生きていいんだぞって意味だよ」

乱歩酔歩